フェデリコ・フェリーニ監督作品 女の都について

こんにちは。黒沢清フェリーニの中で一番好きなのがこの「女の都」(1980)らしいです。僕は黒沢清のファンなので色眼鏡かもしれませんが僕も今まで観たフェリーニの中で一番面白かったです。前に「カサノバ」(1976)を観たのもあって「女の都」は非常に分かりやすかったこともあります。フェリーニの映画は実は構図が完璧です。結構集中して画面を観ていましたがどの場面も話は奇天烈ですが構図に関しては整然としていて本当にフェリーニの頭の中のイメージを映像化している感じがありました。全体的に暗いシーンが多く女性の顔のアップのシーンで光の陰影の関係で何度かゾッとするようなシーンがありました。全然ホラー映画ではありませんが劇伴が無い場面が多く静寂の中で暗い画面に出てくる人間というだけで恐怖を表現出来るのだなと思いました。凄かったシーンを羅列するとまず序盤の女性たちの集会のシーンとその後のスケートのシーンその後の老齢の女性が服を脱ぐシーンで服だけを吊り糸に投げるシーン3台の車が主人公の後に尾いてきて主人公が振り返ると消灯するシーン巨根博士の家で女性の写真と声が一斉に点くシーンその家でのパーティーが終わって使用人のような女達とダンスするシーンそしてその後の嵐の夜のベッドシーンとそのベッドの下の空洞から滑り台に繋がり主人公の人生の走馬灯を見るシーンそしてラストのコロシアムのシーンです。本当に1つ1つの場面に理解出来ない程の情報が溢れていてそれはやはり人生というものを1つの映画にするとこんなにも混沌とした寄せ鍋のようなものになるということだと思います。終わり方も素敵でした。夢オチですが何というか最後の最後にふわっとした感じで終わるのは良いですね。フェリーニは理解出来ないことが作家性なのかと思っていましたがこの映画に関しては凄く理解出来ました。「カサノバ」が元々あんな訳のわからない原作だったのか何なのでしょう。もっと正直に言えば面白かったというかこの映画を肯定したいという感じです。この面白さはただのエロエロ映画ではありません。莫大な予算が掛かっていることは勿論ですがその予算を使えるだけの才能というものもあると思います。あんなに大量のエキストラと大掛かりなセットを使える監督は今居るのでしょうか。フェリーニの現場ってどんな感じだったのでしょう。序盤の集会シーンでは全然関係ないエキストラが様々な性に関する言葉を叫んでいてあれは現場でフェリーニがあなたこれ言ってくださいみたいなやりとりがあったでしょうか。