ティム・バートン監督作品 マーズ・アタック!について

こんにちは。黒沢清のオールタイム・ベストに載っていたので観ました。最近何故か娯楽映画をよく観ています。キャストが豪華でジャック・ニコルソンナタリー・ポートマンマイケル・J・フォックスが出演しています。火星人が地球を侵略する話ですがとても編集のテンポが良く面白いです。それは省略するところはバッサリ省略しているからでもあります。例えば火星人の言葉を翻訳する機械が出てきますがそれについての説明は一切ありません。ドュニ・ヴィルヌーヴの「メッセージ」(2016)が一作かけて取り組んだ問題をひょいと躱している感じが良いです。映画全体が映画のパロディというか映画みたいなシーンをわざと使って皮肉めいたことをしています。僕は初見でしたが火星人を迎えるセレモニーで平和の象徴の白い鳩が出て来た時あ絶対こいつ殺すだろうなと解りました。ティム・バートンはシニカルなブラックユーモアとしてこの映画を作ったと思いますがそれ以上に人間に対する嫌悪感が見え隠れします。その辺りが凄く好きです。映画みたいなシーンで言うとジャック・ニコルソンが火星人に対してどういう対応をするか悩むシーンで画面の右と左の人物で和平か対立か分かれていたりジャック・ニコルソンの最期も非常に映画的でちゃんと言葉ではなく映像で説明してくれる映画でした。途中で火星人が化けた女が出てきますがそれの動き方が凄く恐かったです。黒沢清の「DOORⅢ」(1996)の女や「花子さん」(2001)の女の動きに似ていました。どっちが影響を受けたのかお互いに受けているのか分かりませんが黒沢清の1990年代のフィルモグラフィーはやはり明らかにアメリカの娯楽映画です。この映画も明らかに古い映画に対する愛があってCGも本当はもっとリアルに出来たのかもしれませんが敢えて少しチープにしている気もします。でもこれくらいのリアリティで良いのです。