高橋洋 恐怖について

こんにちは。前に一度観て面白くないと思っていましたが今回観直すと面白くなっていて驚きました。何というか今の自分の気分的に物語のクオリティとかよりも細部のディテールが気になっていてそれで言えばこの映画は細部に高橋洋の作家性がよく出ていると思います。そして高橋洋は女優を美しく撮れる監督です。同じく高橋洋の「ソドムの市」(2004)は確かに酷い作品でしたが実は今も尚心に引っ掛かっている程の衝撃を受けました。これは推測ですが例えば宮崎駿高畑勲の関係で高畑勲宮崎駿のようなファンタジーを本当はやりたかったけれど宮崎駿がその道を行ったから自分はアンチファンタジーで行くというように高橋洋の朋友である黒沢清がメジャーな映画で行くならば自分はとことんマイナーな映画で行くぞと高橋洋は何処かで決めたような気がします。「ソドムの市」は低予算を逆手に取ってすらいません。とことん安っぽく何処まで阿保な映画が撮れるかを追求した映画です。その姿勢に感動したのかもしれません。「恐怖」(2010)はそこまで低予算ではなかったと思いますがこのマイナー志向が随所に伺えます。観ていて一つだけ分からなかったのは中盤辺りで死体をリモコンのようなもので出したり消したりしていましたがあそこだけ技術レベルが上がっていてそんな技術がある世界だったのかと驚きました。高橋洋自身が発言していますが楳図かずお原作鶴田法男監督の「おろち」(2008)でもそうであったように姉妹ものが大好きらしくこの映画も姉妹の話になっています。僕は正直何処に魅力があるのか分かりませんが姉妹は兄弟よりも何となく仲が良くそれでいて姉は妹の母親のような役目を持つので擬似的な家族や女同士の確執など物語において二人の存在が多義的に働くことが魅力なのでしょうか。あと掴みが凄く上手かったです。看護婦の長宗我部陽子があなた死んだのよと言うだけですがそれだけであの世界観が納得出来るような説得力がありました。