楳図かずお おろちについて

こんにちは。鶴田法男の「おろち」(2008)を観てから逆説的に読みました。2巻までKindleで読みましたが1巻の衝撃が凄まじかったです。1巻は「姉妹」(1969)と「骨」(1969)という2篇から成っており「姉妹」は映画版にも使われた話の一つでしたがまず絵が上手いです。漫画を久しぶりに読んだからかもしれませんがとにかくおろちが可愛いです。楳図かずおは元祖美少女系の漫画家だったようです。そして話の構成も非常に上手く女性の美に対する執着と最後のどんでん返しまでの展開が綺麗です。この話の登場人物たちもかなり狂気的でいつもの楳図かずおっぽい話なのですが次の「骨」はもっと凄かったです。前にも書きましたが楳図かずおの特徴として話が進むに連れ登場人物たちがある狂った確信を持ちその運命に突き進みます。それは展開に窮して苦し紛れにそうなったようにも見えますがここまで綿密な絵で描かれると話の狂気と作者の狂気の整合性が釣り合ってアートにすら見えてきます。「骨」の中盤崖から転落して死んだ筈の夫と再婚した妻が互いをはっきりと憎み合い妻が車で夫の居る海岸に向かうシーンは鳥肌が立ちました。そして全く救いの無いラストシーンも素晴らしいです。2巻も面白かったのですが余りにも1巻が凄かったのでちょっと惰性で読んでしまいました。楳図かずおは一日一話くらいが丁度良いです。そして改めて楳図かずおは本当にホラー漫画のパイオニアなんだなと思い知りました。「ふるさと」(1969)の子どもの使い方とか「秀才」(1969)の家族の場合も母子の対立がメインに話が進みます。最初は子どもの方が普通で母親が異常でそこには勿論理由はあるのですが結果的に母子は両者ともに狂っていくという過程が面白いです。絵に関して言えば顔の影とかは結構気まぐれに描いている気がします。