神代辰巳監督作品 恋人たちは濡れたについて

こんにちは。凄く面白かったです。神代辰巳は初めて観ましたが非常に作家性のある監督だと思いました。全体的には良質な青春映画という感じです。神代辰巳も映画を沢山観ている映画監督という感じで一々演出が映画的で素晴らしいです。主人公がずっと顔が瓜二つらしい故郷の人間と間違われているというのもとても示唆的です。そしてそれが最後まで明白にならないのも良いです。冒頭の10分で心を掴まれました。登場人物の状況と2人の危ない関係をスムーズに説明しています。こういう破天荒な主人公(大江徹)は最近あまり見ませんが足で蛇口を捻ったり舞台で一人芝居したりするところが好きです。またロケーションも素晴らしく廃船での情事や港町の風景主人公と映画館主(絵沢萠子)が通る草のトンネルのような場所など情緒があって素敵です。このトンネルのシーンは2回ありますがとても印象的な歩くシーンです。ただ歩いているだけですがトンネルの内と外の明暗とそれを潜り抜けることが特別な意味を持っているように感じます。一番良かったのは中川梨絵がバスに乗り込んで恋人が車からバスの窓にみかんを投げ付けるという書くと意味不明なシーンです。これが映画の中でとても効果的に演出されています。即興的であり前衛的でもありながら映画として機能しているという天才的なシーンです。

20230727

それから忘れていましたが絵沢萠子が首吊りをするために梯子を持って記念碑のところで首を括ろうをとして失敗する一連の流れも大変喜劇的で悲劇的な素晴らしいシーンです。首を吊るときは梯子を掛けて内側から登り吊ることを初めて知りました。