大島渚監督作品 少年について

こんにちは。冒頭のひとりで鬼ごっこするシーンが好きです。1969年の高知市の映像が観れることも貴重です。Amazon primeで観たのですが途中で前のシーンの音声だけが重なるところがあって、これは少年の精神世界の描写で少年がそのことを思い返しているのか、かなり前衛的な試みです。実在した当たり屋家族がモデルになっているようですが、何気ない街を映した映像にも車は当然走っていて題材としてコストパフォーマンスが良いというか、この映画自体当時として低予算で作られた映画らしくその意味でも勉強になります。また編集が面白くかなり切れ味の鋭い省略が用いられています。オープニングの黒い日の丸や終盤の宿の奥の部屋に飾られている日の丸などが戦争を暗喩させます。正確に言えば戦争の生んだ災厄というかその権化が傷痍軍人である主人公の父親です。交通事故で死んだとされている少女のシーンはこの映画の中で良い意味で浮いていて、正直凄く怖かったです。まずあんな程度で死ぬのかどうか疑問がありますが、これは少年の中で少女が死んだということが大事です。少年が歩くロード・ムービーといえばアッバス・キアロスタミの「友だちのうちはどこ?」(1987)を思い出します。映画の主役に子どもを使うと何処か身に覚えがある親近感が湧きますが、それを逆手に取って倫理的に反している行動をする子どもを既視感のある良質なロード・ムービーに仕上げたことが素晴らしいです。