エミール・クストリッツァ監督作品 アンダーグラウンドについて

こんにちは。TSUTAYAでレンタルして観ました。ジャケット借りしたので何となく内容をパッケージから予想していて、何となくフェデリコ・フェリーニっぽいなと思っていたら正にフェリーニでした。他の方の感想を読むと同じようにフェリーニを感じている方がいて、フェリーニの酒池肉林の映像表現から少し猥雑さを抜いたのがこの映画です。ストーリーは戦争を寓話的で喜劇的に描いていて、というのもこのエミール・クストリッツァ第一次世界大戦の発端となったオーストリアの大公夫妻が殺害されたサラエボ事件の起きたボスニア・ヘルツェゴビナ出身で、関係あるのか分かりませんが戦争に対する意識は恐らく幼い頃からあったのだろうと思います。映像が素晴らしく前にも書きましたが1990年代の映画の映像は本当に美しいです。この映画やフェリーニの映画を観て感じるのは、映画が持っている力はストーリーを物語ることだけではないのだ、ということです。極端に言えばその場所で起きたあらゆることを記録出来るカメラを存分に発揮するためには起承転結は不要で、むしろその方が観客は映像に集中します。というかこの手法は我々が本来ならば映画の均整の取れた美しい景色(ひとつのショット)を観て感動する筈の感覚をストーリー展開のために通常3秒なり5秒くらいで切り替わる映像によって麻痺することへの抵抗なのかもしれません。

 

20230313

ラストシーンの島が分離するのは現ボスニア・ヘルツェゴビナが1992年から起こしたユーゴラスヴィアからの独立運動が背景にあるようです。終盤の陰惨な展開からのあの夢のような宴は、やはりフェデリコ・フェリーニの「8 1/2」(1963)のラストの「人生は祭だ。ともに生きよう。」を想起させます。死んだ筈の人間が現れる水中のシーンは良い演出だと思いました。