クロード・シャブロル監督作品 美しきセルジュについて

こんにちは。amazonBlu-rayを頼みました。1959年の映画ですが、昔の映画は基本的に会話劇が中心に物語が展開していくので、現代の映画のように様々な飾り付けが無い素朴な印象を受けました。ヌーヴェル・ヴァーグっぽさはあまり感じませんでしたが、前衛的な演出よりもスタジオ撮影を使わずオール外ロケで撮っていることが当時としては新鮮だったのかもしれません。夜の雪のシーンなども本当に懐中電灯の灯りしか光源が無いです。色々と謎の多い映画です。タイトルの「美しきセルジュ」のセルジュ(ジェラール・ブラン)とは主人公フランソワ(ジャン=クロード・ブリアリ)の友人でありアルコール依存症のろくでなしの男です。何故それが美しいのか。ラストの赤ちゃんも医者は未熟児だと言いますがしっかり泣き声は聞こえていて、でもセルジュの狂ったような笑いから推測すると結局のところアンハッピーエンドなのかなと思います。マリー(ベルナデット・ラフォン)は魔性の女です。ジャック・リヴェットカメオ出演しています。僕が一番好きだったシーンはセルジュが独り言を言いながらフランソワを探しているシーンです。映画において情けない男は魅力的に映ります。

20230417

素朴な物語と書きましたが、昔から知っている友人が徐々に狂っていくのは結構悲惨です。またその父親は実の娘でないことを良いことに友人の妹であるマリーに性的暴行を働いたりしています。印象的に神父が登場して若者の信仰離れを嘆きますが、1950年代末のフランスの世相を反映している気がします。いや詳しくは知りませんがやはり宗教のある国では神の不在とかが映画のテーマになったりするので、とか書いている時に神の不在について調べてみるとフランスのジャン=ポール・サルトルに辿り着いたので、やっぱりそうかもしれません。でもそうだとしたらラストの展開で主人公は死んで友人は自己犠牲の尊さを知るみたいな展開になりそうですが、実際はそうなっていません。この発想自体仏教の捨身飼虎図とかに代表されるようなアジア圏の発想なのかもしれません。