溝口健二監督作品 祇園囃子について

こんにちは。面白い映画でした。若尾文子は可愛いです。溝口健二をちゃんと観たのは初めてかもしれません。物語は勿論面白いのですがもっと良かったのはカメラワークです。人物の移動に合わせて動いたり挨拶に行くシーンの横移動のショットは特に良かったです。また終盤の木暮実千代の電話の動きに合わせた移動撮影は惚れ惚れします。何となく溝口健二の凄さが分かりました。カメラが動く時に一番視覚的に心地良い場所で止まります。やっぱり若尾文子の演技は軽やかです。この後の増村保造の「青空娘」(1957)でも共演していた浪花千栄子と本作でも共演しています。構成が非常にスマートで前半のスピーディーな導入と芸姑になるための訓練、後半の問題の解決までの展開はとても明朗で素晴らしいです。木暮実千代が着物を脱ぐシーンが3つほどあってそれぞれに違う意味を持たせています。映画の中で血が見えるシーンが一度だけあり後にも先にもそんな暴力的なシーンは無くそこだけ少し異質な空気を醸し出しています。そのシーンは主人公の若尾文子が芸者の世界に絶望する契機となる箇所であり、しっかりその部分が強調して演出されています。今から70年前の1953年に制作されたこの映画は今の映画と比べて観ても全く遜色が無いです。というかむしろ秀でています。