荻上直子監督作品 かもめ食堂について

こんにちは。「やっぱり猫が好き」(1988)から小林聡美もたいまさこ目当てで観ました。結論から書くと良い映画だと思いましたが途中までは理解出来ない映画でした。理解出来ないというのはその場面の必然性についてです。具体的に言うとサチエ(小林聡美)とミドリ(片桐はいり)がガッチャマンの歌で打ち解けるシーンがこれは最後まで観ると不思議とあれは必要だったと思うのですが観ている時は何故こんなシーンがあるのか理解出来ませんでした。もっと語弊を恐れずに言えば女性の映画監督っぽい映像だなということです。少しアートっぽい感じが鼻に付いたのかもしれません。小林聡美の演技も最初はぎこちない印象がありました。何というか自然体過ぎて逆に不自然な感じです。マサコ(もたいまさこ)が出てくるのが中盤辺りでそれがもう少し早くても良かったかなとも思いました。小林聡美片桐はいりではバランスが取れてない感じがあってそこにもたいまさこが入ってくることで画面に調和が取れます。あと普通にポットにカメラマンが映り込んでいたり舞台となる食堂に窓ガラスやら鏡が周りに沢山置いてあってそれも気になりました。色々書きましたが良いところもありました。ベタですが言葉が通じていなくても会話が成立しているのとかは良かったです。それからマサコがおにぎりを食べる時に周りの外国人が皆急に黙り込んで見つめてくるシーンやラストのサチエのプールでの拍手のシーンなどは映画にしか出来ない演出で素晴らしいと思いました。マサコは実は死人なのかなと思うほどに不穏な演出が多くあってほんわかした物語の中に混ざる異質さが良かったです。小林聡美は自然体過ぎてもっとキャラクター然とした警官とか教師とか演じる方が良いのかなとも思いました。あとサチエが語る父親の言葉が前の店のオーナーだったマッティ(マルック・ペルトラ)の言葉だったりミドリが全く同じ台詞を喋っていたりマサコの失くしていたカバンに入っていた金のキノコなど色々気になるシーンがあってこれはとんでもない秘密が隠されているのではないかと思っていたら井上陽水の「クレイジーラブ」という素晴らしいエンディングテーマが掛かって映画は終わってしまいました。このエンディングに入るまでのシークエンスが非常に良くてそこで今までのモヤモヤを忘れて悔しくも素敵だなと思ってしまったのです。終わりよければ全てよしと言いますが正にそういう映画でした。

20230609

すいません前言撤回します。今amazon primeで観直したら冒頭のガッチャマンの下りも小林聡美の演技も凄く良かったです。映像も非常に綺麗です。前回僕はTSUTAYAでレンタルしたものを車で鑑賞していたのですがまず車で観るとエンジン音で低音が聴こえないため音量を大きくしないといけない問題があってそういった諸々から何となく嫌な印象を抱いていたのかもしれません。それか2回目の方が面白く感じるのか初めて観た時には全く聴いてなかった台詞とかがあって我ながら好い加減だなと思いました。映り込みは序盤からかなりありました。もたいまさこに猫を渡すおじさんはかなり序盤から出ていました。でもそんな伏線は初見で分かる訳はなくやはり何度も観るように設計されて作られた映画なのかもしれません。というかやっぱりラストは何度観てもめっちゃ良いです。好きですこの映画。