溝口健二監督作品 西鶴一代女について

こんにちは。冒頭の田中絹代ジュリエッタ・マシーナに見えます。とにかくカメラワークが素晴らしいです。とぼとぼ歩く登場人物に対してカメラはダイナミックに動きます。木立の中を走り抜けるシーンや田中絹代が殿様の側室になることを両親に説得される場面、田舎大尽が遊郭から逃亡するシーンの映像の豊かさは筆舌に尽くし難いです。溝口健二は猫も杓子もカメラワークの人だという印象です。それからカメラワークと関係あるのでしょうが動線がちゃんとあります。三船敏郎も出ています。

20230519

溝口健二について少し調べてみると、どうやらクレーンショットによって映像の寄りと引きとをカットを割ることなく行った先駆的な映画監督だったようです。小津安二郎にしろこの時代の映画監督は映像におけるモンタージュやカットバックなどの効果を疑い、意欲的に新しい表現方法を模索していたのだと感じます。またこれは僕が最初に観た「祇園囃子」(1953)ではあまり感じなかったのですが本作の「西鶴一代女」(1952)では特に人物のアップのショットが少なく非常に客観的な印象を受けます。最後まで観て全く救いの無い終わり方にびっくりしました。凄く正直に言うと後半は同じ展開が多く少し長く感じました。翌年の「祇園囃子」と比較するとクレーンショットがこれでもかというくらい使われていて、また俯瞰のショットなどは実写映画では中々見ないくらいの真俯瞰に近いくらいのショットがあったりして面白かったです。