丸尾末広 アン・グラについて

こんにちは。面白かったです。主人公の出で立ちは完全に水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」(1965)の鬼太郎です。半自伝的な内容で恐らく丸尾末広が多感な10代の頃1960年代後半の全共闘の時代の空気感を幻想的に描いています。実在の人間も出ていて有名な永山基準という死刑の判断基準を作ったとされる永山則夫が出てきます。絵は言うまでもなく上手いのですが丸尾末広は安定してずっと上手いです。タイトルが示すようにアングラ文化という暗いニッチなジャンルでクリエイティヴィティを保ち続けるのは生半可なことではありません。だからこういう作家は息が短いのが普通ですが丸尾末広が60代を越えてもなおこれだけの作品を作れることに驚愕します。話も面白くてそのドキュメンタリー的な話の中に時々入り込む違和感がモヤモヤした読後感を残します。さっきあったことがまるで嘘だったかのような場面がありますが、その次に全共闘の抗争が繋げられていることを深読みすればそれは森田童子の「みんな夢でありました」(1980)のような時代の嘘というか欺瞞を炙り出したかったのかなとも思います。主人公は確実に丸尾末広の分身であろうと思いますが彼の世の中を見る目線に非常に共感します。