西川美和監督作品 すばらしき世界について

こんにちは。役所広司マルチバースがあるならば今村昌平の「うなぎ」(1997)や白石和彌の「孤狼の血」(2018)などに属する役所広司です。こういう役柄ははまり役です。関係ないことですが婦警役の山田真歩の演技が良かったです。劇団出身らしく見た瞬間びびっと好きだ、と思いました。偏見かもしれませんがやはり劇団上がりとかの人は本当に小さい舞台で真ん前にお客を相手に芝居する訳で、普通の役者と何かが違います。何というかこちらが思わず見てしまうような動きや聴いてしまうような声を無意識なのか意識的なのかしています。ちなみに役所広司仲代達矢主宰のの無名塾出身です。キムラ緑子の台詞で、現実は大して面白くないけど我慢しなければいけない、みたいな台詞があってこれはやはり映画を意識しての発言に聞こえます。何故そう思ったのかというと、この映画は出てくる悪い登場人物が皆過剰にデフォルメされているからです。序盤のマンションの騒音で揉める若者たちにしても、知的障害者を虐める職員にしても過剰に描かれています。ラストもそう考えると映画という虚構の世界から抜け出して現実の人間に戻ったという解釈だと思いました。というかこのタイトルバックは黒沢清の「アカルイミライ」(2003)とか青山真治の「EUREKA」(2000)を彷彿とさせるものです。とてもアイロニカルです。映画の中でどれだけの悲劇を描いても現実には太刀打ち出来ないことを表しています。