大島弓子 ロストハウスについて

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こんにちは。最近ルーティンワークというものが出来ています。漫画が捗ってとても嬉しいです。ミニコンポを導入したおかげというのもあります。音楽の聴き方が変わり聴く音楽も変わりつつあります。僕が買ったミニコンポは低音が良く聴こえるので、ベースが良い音楽を探したり、色んな楽器が入った音楽を探したりする内に、昔好きだったキリンジにまたはまってしまいました。そしてやっぱり僕はコーラスワークが好きなことに気付きました。最近の音楽にはコーラスワークがあまりありません。何故なのでしょう。さて大島弓子はとても有名な少女漫画家です。「花の24年組」と呼ばれる1人なのですが、個人的に他と一線を画していると思います。僕が大島弓子を知ったのは大学生の頃で、その頃は丁度ニューウェーブについて調べていて、そこで知った感じです。予めいっていおくと僕が大島弓子の作品で持っているものは非常に数が少なく、偏った意見の可能性もあります。以前僕は少女漫画というものに少しネガティブなイメージを持っていました。いわゆる池田理代子の「ベルサイユのばら」のようなあの印象です。しかし大島弓子を読んで少女漫画に自分がまだ知らない漫画の可能性があることを知りました。それが「ロストハウス」(2001)です。この作品は6篇からなるオムニバスなのですが、全て面白いです。その中でも僕が一番好きな「ジィジィ」について書きたいと思います。まず絵がデザイン的です。デッサンもしっかりしていて、必要最低限の線で描かれています。僕は大島弓子選集の「バナナブレッドのプディング」(1977)を持っているのですが、絵が全く違います。「ロストハウス」の絵は「バナナブレッドのプディング」などの初期の絵と比べると画面が白く、また特徴的である詩的な内語も少なくなっています。つまり洗練されて無駄な部分がそぎおとされている、ということです。こういう漫画家の変遷が見れることは幸せです。僕はずっと同じであるよりも変わり続けることの方が偉いと思うので、やはり大島弓子が好きです。それから一番驚いたのはストーリーの主幹が恋愛ではなく、哲学的なテーマを扱っている所です。もちろん恋愛の要素も入っているのですが、あくまでサブ、というかもっと他にやりたいことがある感じを少女漫画で読んだのは初めてでした。大体の少女漫画は主人公の女の子と男の子がどうやって恋愛関係に発展していくか、というところに興味がいくものですが、大島弓子の場合は主人公の女の子がどう行動して、どういう結果になったのかというところに興味がいくようです。そのためその過程で恋愛が出てきても、自然な流れというか割と淡白に読むことができます。また出てくるキャラクターは皆生まれ変わったように同じ姿で、まるで同じ役者で何本も映画を撮る映画監督のようだと思いました。「ロストハウス」のストーリーは簡単にいってしまうと、女の子が熱射病で倒れた間にみた一夏の夢の話です。こういう夢オチものは、結局最後に夢でした、とやればなにをしても良いので、作家の力量を計ることができる題材です。大島弓子は夢をよく作品で使います。しかも巧いです。大島弓子の夢の使い方として、例えば主人公が本当は思っているけど言えない抑圧された感情を夢、として表現したりするのですが、その表現がお洒落というか、これは好みかもしれませんが僕には丁度良い具合です。

2021 1029
4ヶ月経ちました。大島弓子の作品に漂う雰囲気は中々他の少女漫画にありません。唯一無二です。最近文化功労者大島弓子が選出されました。おめでとうございます。大島弓子の作品に影響されて漫画家を目指す人がもっと増えたら良いですね。