ひさうちみちお 夢の贈物について

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こんにちは。ひさうちみちおについて書く前にニューウェーブに書いておく必要があります。ニューウェーブとは、まあ今の時代インターネットで調べれば一発で出ますが、1970年代から80年代初頭に現れた新しい漫画のことです。それまで漫画は少年漫画、青年漫画、劇画、少女漫画という4つのジャンルに分けられていましたが、その何れにも入らない漫画ということです。明確な定義はありませんが、つまり格好良い漫画ということです。だから読み方としては話のストーリーを追わず、作家性を読んでいく感じになります。「夢の贈物」は短編集のようなものです。全体的に表面的に明るい作品が多く、なのにシニカルな印象を受けます。実験的でひさうちみちおの絵はデザイン的です。平面的で、的ばっかりですが色々な技法で遊んでいる感じもします。僕はこの中でいうと「嘆きの天使」が好きです。絵柄は聖書の中の絵のようで非常に緻密に描き込まれています。出てくる駅や街の様子は宮沢賢治のようです。話も寓話なので分かりやすく作られています。退屈するために生まれたみたい、みたいな台詞が良かったです。読んだ感じを言い表す言葉を調べていると、どうやらナンセンスというジャンルのようです。この短編集の中で山本六郎というロボットの話があるのですが、ドキュメンタリーのようなテイストで、彼が何故ビニールを潰すようになったのかを淡々と描いています。話は読んで理解できるのですが、何故こんな話を作ったのかが分からない作品でした。しかしそれこそがナンセンス、というジャンルなのだと思います。つまり普通の意味のある漫画に対するカウンターのようなもので、そういうものに飽きてきた年頃に読むと非常に衝撃を受けます。