ジャウム・コレット=セラ監督作品 エスターについて

こんにちは。ジャケット借りしたのでパッケージの紹介文を読んでいると、完全にリチャード・ドナーの「オーメン」(1976)の女の子バージョンだな、と思っていたら映画が始まって原題が「Orphan」だと知って同じイニシャルで更に確信に変わりました。ただの偶然かもしれませんがそれにしても似すぎています。しかし個人的に僕は好きな映画でした。ホラー映画でよくある後ろから近づくカメラワークを逆手に取った演出や、舞台が何処なのか、制作されたのがアメリカなのでアメリカだと思いますが、スクールカーストや罵倒の仕方などに国民性が出ていて面白かったです。この映画が「オーメン」と似て非なるところは「オーメン」は悪魔という超自然的な力を使う文字通りゴシック・ホラーなのに対して「エスター」は物理的な力で目的を遂行するどちらかといえばモダン・ホラーになっています。いやゴシック・ホラーと対にするため無理やりモダン・ホラーと書きましたが、サイコロジカル・ホラーかもしれません。そしてこの映画は恐らくリアルにしすぎると色々問題があるからだと思いますが、かなりエンターテイメントに振っている作品です。つまり分かりやすくエスター(イザベル・ファーマン)が狂っていることを描いていて本当はもっとエスターを巧妙にして完璧に両親を騙すことも出来た筈ですが、そうなると児童ポルノに抵触するくらい際どい映画になりそうです。でももしそうなればロマン・ポランスキーの「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)のような何処からが夢で何処までが現実なのか、冒頭が悪夢から始まる映画ですし実は母親のケイト(ヴェラ・ファーミガ)の方が狂っているのかもしれないとも思わせられそうです。こういう少女が父親に色仕掛する話を何かの媒体で読んだのか観たのか分かりませんが、とにかく魅力的なストーリーだと思います。何というか社会に当然存在している道徳とか倫理を揺さぶる力を持っています。恋愛における欺瞞や自身のペルソナなどについても描こうとしているのが良かったです。サイコロジカル・ホラーはやはり面白いです。