アリ・アスター監督作品 ミッドサマーについて

こんにちは。前から気になっていた映画でした。ホラー映画なのにやけに爽やかなジャケットで、明らかに異様な雰囲気がしていたからです。導入が凄く良くてこれから起こる不穏な予兆になっています。近年の映画を観ると圧倒的に洋画が面白いです。何というか洋画には未だに過去の映画の文脈が受け継がれている感じがするからです。邦画はそもそも観ていないので偉そうには言えませんが、コマーシャルとかで観る限りでは映画の文脈が感じられません。映画の文脈とは映画におけるこうなったらこうなる、とかそうなったらそうなるみたいな暗黙の了解みたいなものです。洋画は最新の技術を取り入れながらも、そういう文脈を守っているから面白いのだと思います。今最後まで観ました。滅茶苦茶面白い映画でした。設定は所謂ワンシチュエーションムービーで、ある閉鎖された空間で徐々に人数が減っていくゾンビ映画的な感じですが、まず映像がとてつもなく綺麗です。これは僕が最近の映画をあまり観ていないからかもしれませんが、この美麗な映像で語られる宗教の儀式は美しく異様です。未開の文明に対する我々の好奇心や、日本でいう稀人信仰のような、恐らく定期的に外部から来た男女二人をこちらに引き込むためのプログラムが恐ろしいです。劇中で登場するタペストリーはエドワード・ゴーリーっぽいタッチで内容は丸尾末広のようなものでした。とにかく映像が凄く陰部が映っていたり、阿鼻叫喚の合唱には鳥肌が立ちます。よく分かりませんがどうやら彼らは同じ信者の感覚を共有しているようです。ラストは何処かのブログで読みましたがやっぱりファイアエンドです。最後は燃えたり壊れたりしないと映画は終われないのです。結局この映画が意味するのは我々の理解が及ばない世界があって、それは村に入る前にカメラが上下反転する映像があったように、価値観が全く違う人間が確かに地続きのこの世界に居ることを示したかったのかと思います。気になる映像表現として歪みやレンズフレアなど、細かい演出も主人公のダニー・アーダー(フローレンス・ピュー)の崩壊していく精神状態を表しています。正直途中までは普通の映画だと思っていたら中盤あたりからググッと加速して終盤にはとんでもない映画になっていました。