夏目漱石 それからについて

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こんにちは。夏目漱石を読もうと思ったきっかけは宮崎駿が好きで読んでいることをなにかのドキュメントで観たからです。調べてみると昔は国民的な小説家だったそうですね。「それから」はまだ読み切っていません。何しろページは少ないのですが、文章量がぎっしりあって読むのにとても時間が掛かります。それと日本語が古いのでじっくり読めば意味は解りますが、やっぱり時間が掛かります。他の方の感想を今回は読んでいないので、素っ頓狂な感想になるかもしれません。順を追って書くと「それから」は半年くらい前にも読んでいました。何故今また読み返したかというと、芸術論みたいなことを考えるときに夏目漱石が読みたくなるからです。夏目漱石の小説は「草枕」や「三四郎」もそうですが、基本芸術論の話です。「草枕」は有名な冒頭の書き出しから余りにも話が難解で何度も時間を置いて読んだ覚えがあります。それでも読めてしまうのは、要所要所で現代に通じる価値観や考えが挟まっていて、そこを中継しながら分からないところと分からないところの間を埋めていけるからだと思います。夏目漱石が生きた時代は明治時代で、文明開化により西洋の文化が流入し日本の生活様式が大きく変わった時代でした。その中で日本人としてのナショナリズムを維持しようとするのは当然のことに思われます。「竜馬がゆく」を今読んでいることも関係しますが、明治維新の激烈な志士たちの攘夷運動を考えながら読むと、文明開化を受け入れて生きる無知な庶民、それに抗い民族性を保持しようとする知識人という構造がわかります。

 

2021 0921

「それから」の主人公の長井代助は思索家で30になっても結婚していません。家には門野という書生が居て身の回りの世話をしています。所謂貴族階級というもので、家のお金で働かずに生活し、芸術について考えたりしています。長井代助の思考回路は芸術至上主義に似ています。少し違うのですが、太宰治の「人間失格」にも似ています。頭が良い人間は道化を演じることでしか一般人と付き合えないことが繰り返し出てきます。他人のちょっとした仕草や言葉に引っ掛かって考え込むところなど、神経質でナイーブな青年です。「三四郎」では大学に通う田舎の学生だった小川三四郎が「それから」で生まれ変わって長井代助になっている気がします。日本で夏目漱石が国民的な作家だった時代は皆これを読んでいたと思うとやっぱりこと文学、という点においては明治の日本はかなりの水準だったと思います。まあ「こころ」は現在でも一番売れている文庫本ですが。また夏目漱石の作品は全体的に暗い印象を受けないことも特徴です。「こころ」は少し暗い話ですが、夏目漱石自身病気がちで死を感じていたからこそ、芥川龍之介太宰治のように自殺することがなかったのだと思います。