手塚治虫 海のトリトンについて

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こんにちは。手塚治虫は日本で一番有名な漫画家だと思います。しかし、それ故実はあまり知られていないこともあります。僕も全て読んでいるわけではありませんが、手塚治虫の膨大な作品群は、彼が2つの顔を持っていることを表しています。それはこどものために、世界を簡略化し、善悪を視覚化してわかりやすく表現する大衆作家としての1人と、作家として、描いてはいけないものを描きたい、という芸術家としての1人です。僕も大学生の時に「リボンの騎士」「シュマリ」「どろろ」「ブッダ」「火の鳥」などを読んで、本当に作家の熱量というか、狂気に近いものをかんじました。特に「リボンの騎士」は何度も読みました。おそらくディズニーのアニメの影響だと思うのですが、全てのコマに絵がぎっしりと描き込まれ、構図も人物の全身が収まる映画的な構図になっていて、当時のこどもは熱狂して読んでいただろうな、と思いました。手塚治虫自身もインタビューなどで発言していますが、頭の中に膨大にアイデアがあって、体が追い付かない、多作でしかもこども向けのものから、難解なものまで多様な作品をずっと死ぬまで作り続けた鉄人、というのが僕の手塚治虫の印象です。
海のトリトン」は日刊連載で毎日1ページずつ連載されました。僕の感想としては、手塚治虫が実験的にこども向けの話に性的な表現を忍ばせた作品だなということです。これは1巻のあとがきにも書いてあることですが、やたらと性的な表現が出てきます。それは人間にかぎらずイルカでもアザラシでも変わりません。手塚作品はもとから性的表現は多い方ですが。それと「海のトリトン」は海の解説やトリトン一族とポセイドン一族という分かりやすい対立構造で「どろろ」のように、1人ずつ敵を倒していく活劇など基本はこども向けに作っているのですが、一方主人公の和也とトリトンの二人とも犯罪を犯したり、ヘプタポーダが自殺したりなど、社会的な重いテーマが入ったりもします。このアンバランスさが僕は好きなのですが。読んでいて「HUNTER HUNTER」のパクノダはおそらくヘプタポーダだろうなと思いました。