ロマン・ポランスキー監督作品 オフィサー・アンド・スパイについて

こんにちは。ロマン・ポランスキーの映画は最も映画らしい映画だと思っています。使っている技法は何ら新しくない使い古された遠景、人物のアップ、人物の移動、POVショット、小道具のアップなどを組み換えているだけなのですが、それが視覚的に凄く心地良いのです。カメラの移動速度にその秘密がある気がするのですが、何故心地良いのか未だによく分かりません。また映画の後半辺り画面全体に不穏な空気が立ち込めて、いつ誰が銃で撃たれるのかヒヤヒヤしながら観ていました。そして言わんこっちゃないちゃんと撃たれました。この映画は一応史実に基づいて作られているからなのか、ロマン・ポランスキーがよく使う夢の描写が少なかったです。ポスターのピカールジャン・デュジャルダン)とドレファス(ルイ・ガレル)がそうであるように、二人は映画の中でも共に同じ方向を向くことは無く、常に対立した構図で描かれています。ラストのエピローグが格好良く普通のサクセスストーリーではない、現代まで続く人種差別を匂わせるようなシニカルな終わり方でした。