宮崎駿監督作品 未来少年コナンについて


こんにちは。最近は音楽にまた興味が出てきています。YouTubeで海外のアルバムやハワイアンミュージックなどを良く聴いています。瀬戸弘司がウクレレのイベントの動画で、音楽理論はずっと変わらないからゲームするより音楽を趣味にする方が有意義だよ、みたいなことを言っていてその通りだな、と思います。さて「未来少年コナン」。SFについて調べる一貫で、これは外せないと思い、TSUTAYAで借りました。まだ2話しか観ていませんが、そこまでの感想を書きます。「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」というラジオ番組に庵野秀明が出演した回があって、そこで庵野秀明が「宮さん(宮崎駿)は太陽の王子ホルスの大冒険(1968)のリメイクをずっとしている感じがする」という旨の発言がありました。このラジオは他にも高畑勲宮崎駿の制作論の違いなど興味深い話が沢山あります。それで今回観てみてその意味が分かりました。少年が父親の死により旅に出る場面や、鳥と心を通わせる少女など、ストーリーも含めて「太陽の王子ホルスの大冒険」の影響を感じます。他にも「アルプスの少女ハイジ」の影響も勿論あります。「未来少年コナン」が1978年、「アルプスの少女ハイジ」が1974年です。「アルプスの少女ハイジ」で画面構成として参加した経験を経て得たものを試している感じもします。影響、とずっと書いていますが、宮崎駿もメインのスタッフとして参加しているので、影響というのは正しくないかもしれません。アニメーションの面でいえば、宮崎走り、と呼ばれる宮崎駿のアニメーション特有の走り方や、足の先っぽで飛行機に摑まったり、アニメーションならではの重力を無視した表現が多いです。

SFを考えるとき、やはり大人を主人公にするより、子供の方が考えやすいです。僕が好きな「十五少年漂流記」や「王立宇宙軍 オネアミスの翼」など子供または青年が力を合わせてなにかをする話にしたいです。

2021 1013
6話まで観ました。のこされ島からインダストリアに行くまでのコナンの行動力は凄いです。「雪の女王」(1957)のDVDの特典で宮崎駿が作品について「思いを貫く、ということを一番良く表現できるのがアニメーションだと思った。」と言っていて正にコナンは思いを貫く少年です。ラナの造形について「BSアニメ夜話」の「未来少年コナン」の回で作画監督大塚康生が出演していて、顎が丸いのが大塚康生の作画、顎が尖っているのが宮崎駿の作画らしいです。SFの面でいえばプラスチップ、と呼ばれる廃材を再利用して石油に換え、パンを作ったり、太陽エネルギーを巡ってのラナとラオ博士の謎が物語の推進力になっています。ストーリーでいえば敵役のレプカモンスリー、ダイスなど様々な組織の人間が出てきだして面白くなってきました。恐らくモンスリー、ダイスは後に仲間になりそうな感じです。

2021 1016
10話まで観ました。とにかくラナが官能的に描かれています。特に苦しそうな顔や抱きかかえられ体がしなっているシーンの多さが目立ちます。僕に邪心があるせいもありますが、これはもう意図的にやっているとしか思えません。コナンが海で育ったため超人的な肺活量をもっていることや、新しくでてきたサルページ船のパッチの出で立ちなど、手塚治虫の「海のトリトン」に似ています。観ていて本当に子供向けのアニメーションか、と思うくらいコナンとラナの関係性は大人です。色々書きましたが総合的には凄く面白いです。SFのアイデアも豊富にありますし、戦車の墓場や、海に沈むビルなど背景の設定も徹底しています。この作品が放送されていた1978年は翌年の1979年には富野由悠季の「機動戦士ガンダム」や松本零士の「銀河鉄道999」などのSFアニメーションが放送されて、恐らくSFアニメーションの隆盛期だったと思われますが、宮崎駿が描くロボットやメカニックは、先の2タイトルとは毛色が違います。まあ設定が文明が崩壊した後の世界なので当然かもしれませんが、そういう意味でも後の宮崎駿の作風を決定づける作品なのは間違いないです。

2021 1025
今13話まで観ました。少し話を整理します。パッチは実はラオ博士でパラクーダ号の船員を救うためにコナン一行はインダストリアに行きました。インダストリアの三角塔でレプカたちに一度追い詰められましたが、そこの協力者おかげで無事逃げ切りました。そしてラナが元々住んでいたハイハーバーに帰ってきました。ここまでの話で感じるのは途中でアイデアや話の推進力がバテていないことです。とにかく展開が早く次から次へと話が進みます。手塚治虫っぽいですね。それからアニメーションも凝っています。コナンが飛んでいるフライングマシンに乗り込むシーン。普通に乗り込むだけですが、わざわざ、一度置いてきた荷物を取りに行かせて、一度乗ろうとしてやめて乗りこむ、みたいなことをしています。キャラクターが動くことで空間が広がっていくことがよく分かります。

2021 1103
23話まで観ました。本作は宮崎駿の唯一のTVアニメシリーズなので比較できる対象がないのですが、とにかくスピード感があります。走るときも皆ものすごく足が速いです。物理法則を無視したアクションはアニメーションならではなので観ていて面白いです。そしてコナンは無敵です。あまりにも強すぎて少し疑問も覚えます。高畑勲が「アニメーション、折りにふれて」で何度も言及していた日本のアニメーションの問題点を思い出します。それは主観的に観客の望む展開を作り、ハラハラではなくドキドキさせる作り方です。しかし話はとてもよく出来てます。何話か忘れましたが、インダストリアにラナを連れて行くかどうかで揉める、みたいな話のときのラストの展開は思わずおおっ、と声が出るくらい良かったです。そしてモンスリーはやはり仲間になり、徐々に可愛くなっていきました。ラナは相変わらず可愛いです。コナンの見た目とか声の感じとかも完全に「太陽の王子ホルスの大冒険」です。どれだけ宮崎駿に影響を与えたかがよくわかります。

2021 1104
そして全て見終わりました。最後はタイトル通りの大団円でした。一つ気になったのはコナンが途中からあまり中身がないキャラクターになったことです。中身がない、訳ではないのですが、何か機械的に正義を執行するマシーンのように、絶対に銃弾に当たらず決して死なず、英雄のような聖人君子になったことが少しひっかました。あまり自分の欲望も無く、あるとすればラナを助けることぐらいです。あと強すぎますね。結局一度もコナンに勝てる相手は居ませんでした。あとモンスリーの花嫁姿が可愛いかったです。口癖はバカね、でしたね。レプカの生死を描かないところは続編を匂わせる感じです。