黒沢清監督作品 スパイの妻について

f:id:okabayashisoma:20210929184353j:plain
こんにちは。まずこの映画を観る前に「映画を書くと頭が疲れる」の「スパイの妻」についての感想を読んでから観ました。黒沢清の「贖罪」というTVシリーズのドラマを観たときに感じた違和感と同じ違和感を観ていて感じました。所謂良い構図のショットがあまり無く、演技も黒沢清っぽい無機質で形式的なものではありません。推測ですが黒沢清の長いキャリアの中で、綺麗な構図で撮ることに飽きてきているのだと思います。観ていて一番気になったのは主人公の福原聡子(蒼井優)のキャラクターです。この人の行動が男の僕にはあまり理解出来なかったのですが、はじめに書いたブログに書かれていたことで納得できたのが、この福原夫妻は演技をしている、ということです。 

2021 0930
もう一度見返して気づいたことは、それぞれの登場人物の変化がちゃんと描かれていることです。幼馴染みの軍人、津森泰治(東出昌大)もそうですし、竹下文雄(板東龍汰)も明確に台詞で変化を言及しています。福原優作(高橋一生)はあまり変化していませんが、彼だけは唯一変化しないキャラクターとして設定されているのかもしれません。映画の中で映画を撮っている、という設定は劇中劇としてよくある手法ですが、この映画ではラストの伏線として機能しています。ラストの「お見事!」は確かに良いです。他にもバスのシーンの外が白飛びしていることや、意図的にカメラのレンズフレアが入っていることなど、気になる点が幾つかあります。今調べると、レンズフレアの原因はカメラの画角内に極めて明るい光源がある場合に発生するらしく、この映画でいうと、聡子にとって優作が光源だとすれば納得のいく演出です。