高野文子 おともだちについて

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こんにちは。随分前に買っていた本です。BOOKOFFに奇跡的にあった一冊でした。高野文子は「絶対安全剃刀」の老女を幼女に描いた話から知りました。その時は漫画のニューウェーブを調べていて、さべあのまあすなひろしなどを探していて偶然見つけました。日本のおともだちとアメリカのおともだちの大きく二編に別れています。日本のおともだちの「春ノ波止場デウマレタ鳥ハ」は主人公の露子が劇で青い鳥を上演することに決まって、同じクラスのあまり喋ったことのない笛子と色々ある話です。書いてみてあらすじが掴みにくい話であると改めて思いました。とにかく空気感がよく描けています。読んだ時に感じた魅力を文章にするのが難しいのですが、なんというか言葉遣いや服装は戦中のような感じです。露子の笛子に対する気掛かりは杞憂のような気もしますが、その探り探りの感じが初めて友達と喋るときの感覚を思い出しました。絵は上手いです。表紙を見て一発で凄い、と分かるくらい上手いです。たまたまAREACOMICのニッポンのマンガ、というタイトルの雑誌に高野文子のインタビューが載っていたのですが、20代の頃は看護師をしながら漫画を描いていたそうで、その経験が漫画の作風に影響しているようです。その頃から同人誌に作品を発表していたようで、トーンの使い方などがやっぱり凝っています。同人誌上がりの作家はやっぱり画力があります。調べると1983年刊行なので、80年代は本当に漫画の隆盛期でした。その頃の一線の作品は今読んでもまだ時代が追い付いていませんね。正直僕も半分理解しているかどうか位です。でも読めば懐かしさや感動が確かにあります。そういえば宮沢賢治にも似ています。全く関係ない子どもたちの終わりかたも非常にお洒落です。ぐっどばい、と英語を平仮名で言ったり、アメリカに行く船が出てきたり、異人を恐ろしく描いていたりと日本とアメリカの対比がよく出てきます。時代的にそういうことに敏感な時代だったのでしょうか。